Optical and Photonic Solutions Blog~日本語版~
公開日:2025年4月3日
自動車分野での一般的な応用例として、全反射(TIR)レンズを使用したヘッドランプの設計があります。本記事では、ハイビームとロービームで構成されるTIRヘッドランプの光学設計ワークフローの概要を紹介します。具体的には自動車用照明設計ソフトウェアLucidShapeのマクロフォーカル設計機能を使用してTIRレンズを作成し、ハイビームとロービーム用にTIRデバイスの設計例を示します。また、これらの設計を既存の車両モデルに統合し、リアリティのある印象を表現します。
初期設計における重要な要素の1つは、光源の選択です。LucidShapeでは、マクロフォーカル計算を行うために光源が必要です。この事例では、OSRAMのOSLON® Compact PL LED 光線ファイルを選択しました。このLEDは白色光を生成します。しかし、光線ファイルよりも多くの光線を出射したいため(よりリアルなレンダリングを行うため)、元のランプのサイズに対応するランバート発光面に置き換えました。光源の位置、方向、スペクトルは、LucidShapeのカラーデータ解析ツールを使用して確認しました。
このハイビーム設計は、OSRAM Ford F150ヘッドランプモジュールから着想を得ています。構造は単純です。まず、コリメーター光学部品が発散する光源からの光を平行化します。続いて、複数の面を持つレンズで配光制御を行います。
ハイビームのユニットは3つのモジュールで構成されています。この設計では、効果的な配光制御を行うために、長方形の対称コリメーターとマクロフォーカルレンズを採用しています。数多くのシミュレーションとテストの後、コリメーターとレンズは、データ変換機能を使用してCADソフトウェアに直接転送され、ハウジングに収まるように正確にカットされました。
結果の可視化には、設計を検証するための鳥瞰図やドライバービュー、スペクトルおよび非スペクトルシミュレーションなど、さまざまな確認方法が用意されています。さらに、配光規格テーブルを使用して、法規に適合する配光パターンを確認しました。
ロービーム用途のTIR光学部品は、LucidShapeのマクロフォーカル・リフレクター設計機能と透明プラスチックを素材として作成されました。切り替え機能により、光源の位置決めをできるだけ簡単にできるよう、中央のファセットを無効にすることができました。主な特徴として、ファセットの広がり角を変化させることで、希望するロービームパターンを実現することができます。最後に、リフレクターをCADに転送して閉じたボディを作成し、TIRオブジェクトを生成しました。
ロービーム解析では、異なるビュー、スペクトルおよび非スペクトルシミュレーション、配光規格テーブルも使用して、配光パターンが要件を満たしているかどうかを確認しました。
現実的なイメージを視覚化するために、LucidShapeの輝度カメラを活用して、フォトリアリスティック・レンダリング用のデータを収集しました。
最終的な視覚化には、Human Eye Vision Image (HEVI)ツールによる後処理も含めました。設定項目はプリセットを使用することで、非常に短時間で写実的な画像を作成することができます。この例では、Vosグレアモデルを使用することで、グレア効果により、さらにリアルな印象が生まれます。
コリメーターとレンズ、またはソリッドリフレクターを使用することは、ハイビームおよびロービーム用途のTIR光学系を設計する2つの方法に過ぎません。設計プロセスの包括的な理解を得るために、モデルのビジュアライゼーションについても検討されています。
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