ロバスト設計とは目標とされる信頼性の確保にフォーカスした既に実証済みの開発理念です。この意欲的な目標に近付くには、ロバスト設計の原則を開発サイクルの初期から全体に適用する必要があります。その目的は、性能に悪影響を及ぼす可能性がある要因を最終製品から排除することです。ロバスト設計では、設計工程で信号、応答、ノイズ、制御の4つの要因を考慮する必要があります。
ノイズはシステムの応答が仕様から乖離する阻害要因になります。ノイズ要因には、製造上の公差とばらつき、経年劣化、使用パターン、環境条件などがあり、設計者のコントロールが及ばない可能性があります。ノイズ要因を特定して定量化することで、どの影響が補正されるべきか正確に選択することが出来ます。制御要因は、システムが予定の性能から乖離するような重大な影響を及ぼす可能性があるノイズ要因の補正に使用されます。
重要なノイズ要因が発見され、制御要因が選択されると、システムの信頼性を確保するためにロバスト設計フローを利用して設計の導入と解析が行われます。ロバスト設計フローの目的は、システムに可能な限りの信頼性と最も適正なコストをもたらす性能要件を満たすことです。
信頼性向上のためにロバスト設計の原則を導入すると、システム性能が設計技術、構成部品のパラメータ、製造工程、動作条件のばらつきによる影響を受けずに済みます。ロバスト設計フローでは、こうしたバリエーションはシステムの性能に影響するノイズ要因になります。各バリエーションを制御する方法は、高精度コンポーネントの選択のように単純な場合もあれば、新しい制御アルゴリズムのインプリメントのように複雑になる場合もあります。バリエーションと制御の可能な組み合わせのマトリックスは非常に複雑であり、従来の設計-プロトタイプ-テストというフローを用いることは非実用的です。下図に示すようなロバスト設計手法を利用し、高性能シミュレーション・ツールがシステム全体の設計と検証をサポートする仮想環境に設計作業を移行する必要があります。
有効で効率的なロバスト設計プロセスを導入するには、専用機能を備えたシミュレーション・ツールが必要です。ツールに必要とされる主な要件は、シミュレーションのサポート、モデル・ライブラリのサポート、モデリング言語のサポート、および高度なデータ解析です。シミュレータには、ロバスト設計プロセスの各工程に専用に組み込まれた機能が必要です。